色彩コラム 色歳時記色彩コラム 色歳時記

vol.4 味わいを深める黒

うなぎ夏本番、厳しい暑さの到来です。土用の丑の日には「丑」にちなんで「う」のつくものや、丑の方角(北)の守護神、玄武の色にちなんで黒いものを食べて厄除けを願う風習があります。万葉集にも「夏やせにはウナギがよいらしい」と詠まれた歌がある程、古くから親しまれてきたウナギですが、乱獲により絶滅が危惧されています。丑の日には希少で高価なウナギに限らず、「う」のつく食材(梅・瓜・牛・うどん等)や、黒い食材(シジミ・黒鯛・黒豆・ナス等)で暑気払いはいかがでしょうか。

夏日本料理では黒い器がよく使われますが、白よりも黒の食器の方が料理の味に奥行きを感じることがわかっています。黒は相手の色をより鮮やかに明るく引き立てる効果もあるので、四季折々の食材の色や、素材本来の味を楽しむ日本料理には適した色です。和食器の代表格である漆器は縄文時代から作られており、現代でも重箱や杯などハレの日を彩るアイテムとして愛されています。

また黒は見た目よりも重たい印象を与える色です。同じ質量のものでも白より黒の方が倍近く重たく感じられるのだとか。ずっしりと高級なイメージから、万年筆や時計など高級品のパッケージに用いられることも多く、クレジットカードではゴールドやプラチナよりも上の最高ランクに「ブラックカード」が位置づけられています。黒い石を敷きつめた玄関や黒い皮張りのソファは、高級で洗練された印象を与えますが、黒の面積が多すぎると圧迫感があり部屋が狭く見えるので、アクセントとして取り入れるとよいでしょう。

夏の風景黒をはじめとする濃い色が熱を吸収しやすいことはよく知られています。夏の室内を快適に過ごすためには、外からの熱を遮る工夫が欠かせません。カーテンやブラインドの色は、光や赤外線をはね返す白や薄い色がおすすめです。夏バテ防止には黒い器で食事を楽しみ、インテリアには濃色・淡色を使い分けて、この夏もお元気にお過ごしください。

pagetop