障子紙の基礎から貼り方まで｜暮らしに合う一枚を見つけるために

障子紙と言うと、シンプルな白い紙でできた障子紙を思い浮かべる方も多いかと思いますが、機能性を重視したUVカットや、破れにくい商品や、デザイン性が高いものも多く販売されています。

本記事では、障子紙の種類や、選び方・貼り方までご紹介します！

障子紙の基礎知識

障子があるだけで、暮らしはこんなに変わる。

■ いま、障子が見直されている理由

近年、障子が持つ機能性や日本らしい美しさがあらためて見直されています。そのシンプルで上品な佇まいは和室だけでなく洋室にも取り入れられるなど、和モダンの住まいづくりアイテムとして活かされています。
また障子には、“デザインとしての魅力”に加えて、“暮らしを心地よく整える働き”があります。
仕切りながら明るさは損なわない障子は、住まいに上質な落ち着きを与えてくれます。

■ 古くから受け継がれてきた、障子の“合理性と機能性”

障子の原型は平安時代から使われており、扉や窓の代わりに使われる建具でした。
その後も障子は日本の暮らしの中で、合理的で機能性の高い建具として活用されてきました。
強い日差しを和らげながら、視線は遮るが、光は取り込む。
いわば“透け感のある間仕切り（パーテーション）”であり、光を取り込む明かり取りの役割も担っています。
木と紙の組み合わせは、日本の気候によく合っており、湿度を調整しながら、直射日光を和らげることで、住まいを守る実用的な働きも備えています。

■ 障子の機能性

■ 住まいを明るく、暮らしを整える、昔のDIY

かつては、障子紙の貼り替えは特別なことではありませんでした。
年末の大掃除で貼り替える家庭は多く、新年を迎えるための大事な仕事として、ごく自然に受け継がれてきました。
子どもも一緒になって家族で貼り替えをするなど、年中行事の面もありました。
どこか、現在の“DIY”にも通じるものがあります。
障子紙を新しくすると部屋がぱっと明るくなり、「住空間だけでなく、心も新たに整える」といった感覚も大切にされてきたのではないでしょうか。

■ 現在の障子紙は、もっと手軽で楽しい

そして現在、障子紙は一昔前よりも扱いやすく進化しています。

破れにくい障子紙、両面テープやアイロンで貼る手軽な障子紙も増え、初めての方でも簡単に貼り替えができるようになりました。
また、小さな破れなら全面を貼り替えなくても部分補修用の粘着剤付きの補修シートで簡単に補修ができます。
また、障子用のりで貼る補修用障子紙には、無地以外にも雲竜、和紙をちりばめた柄もあります。
ワンポイントや、異なった柄を組み合わせて、市松模様のように仕上げたりしてアレンジするなど、DIY感覚で遊ぶこともできます。
破れたところを補修するだけでなく、色や模様を加えて楽しめるのも現代の障子紙ならではです。

■ 障子紙は一定期間毎に貼り替えを

障子紙は、破れ、汚れ、カビ、虫喰いなどの見た目の劣化や、空気や湿度を調整する機能の低下を防ぐため、一定期間毎に貼り替えをおすすめしています。

日差しによるヤケや経時での汚れの沈着は意外と気づきにくいため、目立った汚れや破れがなくても、3~4年を目途に定期的な貼り替えをおすすめします

新しい障子紙に貼り替えると一気に部屋が明るくなり、清潔感を保つことができます。
※貼り替えのタイミングは、障子紙の種類や使用環境などにより変わります。

障子紙の貼り替えのタイミングとは？

こんな変化があれば、貼り替えのタイミング

■ 破れや穴

障子紙は小さなお子様やペットがいるご家庭、また長期間貼り替えをしない場合も経年で破れやすくなります。穴や破れが多い場合は、全面の貼り替えをおすすめします。

■ 汚れや黄ばみ

通気性のある障子紙の場合、空気中のほこりや汚れが障子紙に付着したり、フィルター効果により汚れが沈着して黄ばんだり、変色します。また、遮るものがなく直射日光が当たる場所では、紫外線によって黄ばみます。

■ カビ

結露がひどい場合や、湿気がこもりやすい場所では障子枠やその周辺、障子紙にもカビが生えることがあります。健康を害することもあるため、早めの貼り替えをご検討ください。

明るさや見た目が損なわれたら貼り替えを検討してください。

貼り替えの目安

■ 一般的な目安

見た目の汚れや傷みだけではなく、機能性の維持、貼り替えやすさのためには3～4年、最長でも5年ごとの貼り替えをおすすめします。

■ 使用環境による違い

直射日光が当たる日当たりの良い部屋や使用頻度の高い部屋、湿気や結露がひどい部屋などでは劣化が早まるため、5年以内の貼り替えをおすすめします。

■ 素材による違い

パルプが多く配合された障子紙は一般に強度は低い傾向があります。一方、プラスチックを貼り合わせた障子紙は一般に強度が高く、ペットなどのひっかき傷にも強いので、貼り替え頻度を減らすことができます。

障子紙のサイズと種類

時代とともに変化する障子。サイズとカタチの“いま”

障子紙の貼り替えを考えるとき、まず障子枠の「幅」と「高さ」を確認します。
障子紙の規格や必要本数に関わるので、最初に確認します。

障子紙のサイズについて

■ 昔の障子には、地域ごとの多様なサイズがあった

障子のサイズは、かつて地域や住宅の造り、間取りによって大きく異なり、建具の寸法や格子の組み方によって美濃判（約28cm幅）・半紙判（約25cm幅）のほか、古くから地域に合わせた地方判など、さまざまなサイズがあります。

これら美濃判、半紙判、地方判などの障子紙は、横長に1段ずつ貼る障子紙になります。そのため、障子1段の高さ（障子紙の幅）は重要なポイントになっていました。

■ 今、障子紙を貼り替える時は、”障子枠の幅と高さ”を確認します。

昨今の障子紙は、“一枚貼り”が主流になっており、貼り替えの際、障子1段の高さの確認は不要になりました。障子枠の幅と高さを確認して、貼り替えに必要な本数を考えます。

障子紙の幅には、次の種類があります。
■幅：69cm（幅狭サイズ）…幅の狭い障子に
■幅：94cm（標準・普及サイズ）…一般的な障子に
■幅：135cm（幅広サイズ）…広い幅の障子に
※障子枠のサイズは種類によって数センチ違うことがありますが、障子枠の外寸を基に障子紙の幅を決めると失敗なく貼れます。

障子紙の長さは、種類や製品毎に異なりますが、以下の長さがあります。
1.8m、2.15m、3.6m、4m（広幅のみ）、7.2m、8.6m、15m、17.2m
障子枠の高さを確認して必要本数を決めます。
障子紙は幅、長さ共に一回り大きく貼り、後でカットして仕上げる方法で貼りますので、必要本数を考える際は、少し多い目になるよう必要本数を考えます。

■ 1枚貼りのメリット

・障子1段の高さを気にせずに貼ることができる。
・1段ずつ何度も貼り重ねなくても、さっと広げるだけで簡単に貼れる。
・初心者でも扱いやすい

障子紙の種類について

■ 障子の“代表的なカタチ”

障子には、建物の造りや目的、地域などによって多くの種類があります。
組子の組み方により数十種類以上あるともいわれており、昔の住まいではさまざまな障子が使い分けられてきました。長い年月を経て、さまざまなバリエーションが展開されています。

●荒組障子（荒間障子）
縦と横の組子の間隔が広い（粗い）、最もスタンダードなタイプの障子です。

●雪見障子
上部が障子、下部にガラスを備えた障子です。障子を閉めたまま外の景色が楽しめる障子です。

●腰付障子
障子の下部を木の腰板で保護した障子です。

●額入り障子
障子の中央部分にガラスをはめ込んだ障子です。障子を閉めたまま外の景色が楽しめる障子です。

障子紙の素材

障子紙は、素材で性能が大きく変化する！

障子紙は、一見するとどれも同じような紙に見えますが、その素材や機能はさまざま。
素材が変わると、強さ・透け感・貼りやすさ・お手入れの仕方など大きく変わります。
それぞれの素材の特長や機能を知っておくと、用途や目的に合わせて選びやすくなります。

■ 障子紙（スタンダード）

一般的な障子紙です。パルプの配合率が多い障子紙になります。
パルプが多く配合されたものはお手頃ですが、強度が少し劣るものもあります。

■ 障子紙（ハイグレード）

パルプに合成繊維を加えて強度を高めた障子紙です。
和紙の風合いを残したまま破れにくさが加わるため、バランスの良い障子紙になります。
柔らかな質感と、光をやさしく取り入れる透け感が特長で、和紙の風合いも味わえます。

■ 障子紙（UVカット）

UVカット加工により室内の色あせ変色を防止する障子紙です。

■ 障子紙（デザイン重視）

彩り和紙をちりばめた、見た目の美しさを楽しむ障子紙です。モダンなインテリアにもなじみます。

■ プラスチック障子紙

障子紙にプラスチックを貼り合わせた丈夫な障子紙です。破れにくく、水拭きができるものもあり、ペットや小さいお子様がいるご家庭におすすめの障子紙です。
プラスチック障子紙は、障子紙にプラスチックを貼り合わせた構成のため、冷暖房効果が上がるものや、日差しをカットするものもります。
※ただし、通気性がないので結露する場合があります。

障子紙を貼り替える前に必ず「各製品の説明書」の確認を！

障子紙には“表裏”がありますが、紙の表裏はどちらの向きにもご使用いただけます。
製品の説明書通りに、巻いている外側が接着面になるように（巻物をほどくように）貼ることをおすすめします。
※ただし、アイロンで貼る障子紙は、片面に接着剤がついていますので、表裏を逆に向けてのご使用はできません。

障子紙の貼り方

障子紙の貼り替え方法には「3つの方法」があります！

■ のり貼り

難易度：★★☆☆☆（のりを塗る手間はかかるが、初心者にも簡単）
仕上がり：★★★★★（タルミは霧吹きで手直しできる）
作業時間：▲周囲が汚れないように養生が必要、のりを塗る手間がかかる、道具類の洗浄が必要）

○昔からの貼り方
○タルミができても霧を吹いて乾くと障子紙が“ピン”と張るので、仕上がりがきれい
△パルプが多い障子紙はのりで濡れると、カットしづらくなる場合がある

こんな方におすすめ
・障子紙は“ピン”と張った状態に仕上げにしたい
・従来通りのやり方でのりを使って障子紙を貼り、はがす際は水（はがし剤）を使ってはがして貼り替えたい

■ 両面テープ貼り

難易度：★☆☆☆☆（簡単）
仕上がり：★★★☆☆（比較的きれい）
作業時間：◎（養生不要で両面テープを貼るだけで貼れ、のりを使わないので道具類の洗浄不要、作業時間が最も短い）

○のりもアイロンも使わず、両面テープを貼るだけで貼れる
○のり貼りのようにのりが乾くまで待つ必要がなく、短い時間で仕上がる
△伸び縮みしないのでタルミができないように注意して貼る必要がある（後でタルミは手直しできない）

こんな方におすすめ
・短い時間で仕上げたい人
・手軽に貼りたい人
・周りは汚したくないが、養生するのはめんどう

■ アイロン貼り

難易度：★☆☆☆☆（かなり簡単）
仕上がり：★★★★☆（ピンと貼ってきれい）
作業時間：○（養生不要、アイロンだけで貼れ、のりを使わないので道具類の洗浄も不要、作業時間が短い）

○アイロンを当てるだけで簡単に貼れる
○はがす時もアイロンだけで簡単にはがせる
○のりを使わないため、周囲を汚さずに貼れる
△同じところにアイロンを当てすぎると接着しにくくなる（桟の熱を冷ましてから貼る）

こんな方におすすめ
・のりや両面テープを使わずアイロンだけで貼ってはがしたい
・周囲は汚したくないが、養生はめんどう
・霧を吹いて乾いたときに障子紙が“ピン”と張った状態に仕上げにしたい

障子紙の貼り替え時に準備するもの

■ 障子用ののり

障子用のりには、水で薄めて使うのりと、薄めずにそのまま使えるのりがあります。
いずれも、のりバケを使って塗ります。
また、のりバケを使わずにそのまま使える容器入りののり（ガイドつき）もあります。
手早く貼り替えたいときには特に便利です。

■ 障子紙用はがし剤

のり貼りの古い障子紙をはがす際に使うはがし剤です。
先にスポンジがついているので、のりバケを使わずそのまま直接塗れて、古い障子紙を簡単にはがすことができます。
障子紙の上から枠や桟に障子紙用はがし剤を直接たっぷりと塗り、少し待ってから障子紙を端からゆっくりとはがします。
濡れたタオルで桟に残った紙やのりをよく拭き取り、枠をきれいにして、充分に乾かします。
はがし剤は水と比べてしみこみやすい性質がありますので、効率よく古い障子紙をはがすことができます。もちろん従来通り水やぬるま湯を使っても古い障子紙をはがすことはできます。

■ 障子枠の洗剤

のり貼りの古い障子紙をはがす際に使う洗剤成分を含んだはがし剤です。
障子紙をはがし、障子枠に残ったのりや、汚れも落とすことができます。
障子紙をはがす際は、障子紙の上から枠や桟に障子枠の洗剤を直接たっぷりと塗り、少し待ってから障子紙を端からゆっくりとはがします。
濡れたタオルで桟に残った紙やのりをよく拭き取り、枠をきれいにして、充分に乾かします。
障子枠の洗剤は、障子紙をはがす、枠の汚れをおとす、アクも止めるはがし剤になります。
※障子枠の状態によってはアク止め効果が充分でない場合があります。

■ 必要な道具

のりを塗るハケや、障子紙を切るカッターナイフ・定規、枠の汚れを拭くタオルなど、身近な道具で貼れます。
のりや障子紙用はがし剤、障子枠の洗剤を使う際は、予め養生シートをしいておくと周囲を汚さず安心です。

障子紙の貼り替え時にあったら便利な専用道具

■ カッターナイフ

障子紙専用のカッターナイフとしては、障子紙用丸刃カッターや、ふすま紙・障子紙用カッターがあります。
障子紙用丸刃カッターは、刃先が丸いため、濡れた紙でも繊維をひっぱることなくきれいに切れるカッターになります。
ふすま紙・障子紙用カッターは、切りやすい角度になるガイドつきですので、安定した角度できれいに切れるカッターになります。

障子紙の貼り方

障子紙の貼り方｜一般的な作業の手順

※詳しい貼り方は別途障子紙の貼り方ガイドをご確認ください。

01：古い障子紙をはがす

障子紙用はがし剤や障子枠の洗剤を古い障子紙の上から枠や桟にたっぷりと塗ります。
少し待ってから端からゆっくりとはがします。

02：障子枠をきれいにする

残った紙やのり、汚れは、濡れたタオルでしっかりと落とし、充分乾かします。

03：障子紙を貼る※貼り方は3種類

のり貼り
障子紙は障子枠に仮止めテープで固定し、貼る位置を決めて巻き戻します。障子枠や桟にのりをつけ、障子紙をゆっくりころがして広げて貼ります。

アイロン貼り
巻いている外側が接着面になっています。貼る位置を決めたら、アイロンで四隅を仮止めして余分な部分をカットします。中心から周囲に向けてアイロンを当てて貼ります。

両面テープ貼り
プラスチック障子紙専用両面テープをタテ桟、ヨコ桟の順に貼り、障子紙をゆっくりころがして、タルミができないようにピンと貼りながら一段ずつ押さえて貼ります。

04：余分な障子紙をカットする

余分な障子紙は、定規を当てながらカットします。のり貼り障子紙はのりが乾く前にカットします。

のり貼り
貼りつけ後にタルミが残っている場合は、のりがしっかり乾いてから霧吹きをしてタルミを伸ばします。

アイロン貼り
余分な紙をカットして取り除いた後、もう一度全体にアイロンを当てて仕上げます。貼り付け後にタルミが残っている場合は、桟の熱が冷めてから霧吹きをしてタルミを伸ばします。

両面テープ貼り
余分な紙をカットして取り除いた後、もう一度全体をしっかりと強く圧着して仕上げます。※タルミは霧吹きではとれません。

いかがでしたか？
障子の魅力や種類、障子紙の貼り替えについてご紹介しました。

障子紙が破れたときはもちろん、障子紙の汚れが目立ってきたら、貼り替えをおすすめします。
年末の大掃除やお部屋の模様替えのタイミングで新しく貼り替え、住まいを美しく整えてみてはいかがですか。
気持ちもすっきりします。